股関節の痛み、レントゲンでは「異常なし」——詰まり感・引っかかりの正体
2026/7/4
この記事で分かること
- ✓あぐらや深いしゃがみ込みで股関節の前が「詰まる」感じの正体
- ✓FAI(股関節インピンジメント)という考え方と、画像に写らない「動き」の問題
- ✓前側が詰まるのに、後ろ側の硬さに注目する理由
先日も、整形外科でレントゲンを撮って「異常なし」と言われたのに、股関節の痛みが続いている方のご相談がありました。フィジオサロンキムラでは、この「異常なしなのに痛い股関節」のご相談が少なくありません。
こんな感覚に心当たりはないでしょうか。
- あぐらをかくと、股関節の前側が詰まって痛い
- 深くしゃがむと、脚の付け根に引っかかる感じがある
- 靴下を履く動作や、車の乗り降りでズキッとくる
- 歩くのは平気なのに、曲げる動作だけがつらい
骨に異常がないのに、なぜ「詰まり」は起きるのか。今日はその正体を、理学療法士の視点でひもときます。
「詰まり感」の正体——骨の形と動き方の相性
股関節は、骨盤の受け皿に太ももの骨の球がはまる「ボールと受け皿」の関節です。深く曲げたときに、この球と受け皿のふちが近づきすぎて衝突をくり返す状態は、FAI(股関節インピンジメント=はさみ込み)と呼ばれています。
ここで大事なのは、詰まりやすさは「骨の形」だけで決まらない、ということです。同じような骨の形をしていても、詰まりを感じる人と感じない人がいます。差を生んでいるのは、多くの場合「動き方」——つまり、球が受け皿の中でどんな軌道で転がっているか、です。
レントゲンは骨の形を写しますが、この「軌道」は写りません。「異常なし」と言われたのに詰まりが続く方の背景には、画像に写らない動きの問題が隠れていることがあります。
なお、FAIかどうかの診断は医療機関で行うものです。当サロンで行うのは診断ではなく、姿勢や動作の評価です。
前が詰まるのに、後ろに注目する理由
意外に思われるかもしれませんが、私が股関節の詰まり感を評価するとき、まず注目する場所のひとつが「関節の後ろ側」です。
股関節の球は、関節包というやわらかい袋に包まれています。この袋の後ろ側が硬くなると、股関節を深く曲げたときに球が後ろへ滑り込めず、行き場を失った球が前へ押し出されます。その結果、前側のふちで衝突が起きやすくなる——つまり、「前の詰まり」の原因が「後ろの硬さ」にある、という構図です。
実際の施術でも、この後ろ側の袋をゆるめる方向にやさしくアプローチし、その場でしゃがみ込みや曲げ動作の変化を一緒に確認しながら進めることがあります。詰まる場所そのものを揉むのではなく、球の通り道を作る、という考え方です。
やりがちな逆効果——「前だけを伸ばすストレッチ」
詰まりを感じる場所が前側なので、多くの方が前側のストレッチをくり返します。ところが、原因が後ろ側の硬さや動きの軌道にある場合、前だけを伸ばしても詰まりは変わらず、かえって前側の組織を刺激し続けてしまうことがあります。
「何ヶ月もストレッチしているのに変わらない」という方は、伸ばす場所と原因の場所がズレている可能性を疑ってみてください。痛い場所と原因の場所は違うことが多い——これは股関節に限らず、身体の痛み全般に共通する原則です。
セルフチェック:詰まりの出方を観察する
ご自宅でできる簡単な観察をひとつご紹介します。
仰向けに寝て、片方の膝を胸に向かってゆっくり引き寄せてみてください。左右で比べたとき、「引き寄せられる深さ」や「詰まり感の出るタイミング」に差はないでしょうか。差が大きいほど、動きの偏りが関わっている可能性があります。
これはあくまで観察であって、原因の特定には全身の評価が必要です。無理に深く曲げて痛みを我慢する必要はありません。
こんな時は、まず医療機関へ
次のような場合は、施術より先に整形外科の受診をおすすめします。
- 安静にしていても、夜間もうずくような痛みが続く
- 転倒や強い衝撃のあとから痛み出した
- 発熱や、原因不明の体重減少をともなう
- 脚に力が入らない、しびれが広がっていく
これらに当てはまらず、「検査では異常なし。でも詰まりや痛みが続く」という状態であれば、動きの評価が糸口になるかもしれません。
「異常なし」で終わらせない
股関節の詰まり感は、骨の形だけでは説明がつかないことがあります。だからこそ、レントゲンで異常がなくても悲観する必要はありません。動き方に原因があるなら、動き方には働きかける余地があるからです。
当サロンでは、股関節の動きを含めた全身の評価から、「なぜあなたの股関節に負担が集まるのか」を一緒に確認していきます。大学院で股関節の症例を研究してきた理学療法士として、画像に写らない部分を丁寧に見ることを大切にしています。