その頭痛はどのタイプ?見分け方・危険サイン・「ストレッチより筋トレ」の最新知見まで理学療法士が整理します
2026/8/18
この記事で分かること
- ✓慢性的な頭痛の3タイプ(緊張型・片頭痛・首こり由来)を、痛む場所とパターンで見分ける方法
- ✓すぐ医療機関に行くべき危険サインと、鎮痛薬の飲みすぎが頭痛を増やす「月10日」の目安
- ✓2025年の研究が示した「ストレッチより首肩の筋トレ」という意外な結果と、今日からできる2つの運動
大学院の実習中、腰痛の患者さんに「頭痛はありますか?」と質問して、「……腰と関係あるんですか?」と聞き返されたことがあります。怪訝な顔をさせてしまった失敗として、当時のレポートに残っています。
でも、質問自体は正しかったのです。私たち理学療法士は、腰痛の方にも頭痛を伺います。頭痛は「見逃してはいけない病気のサイン」になることがあり、そして首や肩の状態と深くつながっているからです。
当サロンでも、肩こりのご相談で来られた方に話を伺うと、「実は頭痛もあるんです。もう何年も」と打ち明けられることがよくあります。そして続く言葉もだいたい同じです。「病院で検査したけど異常なしと言われて。だから薬でしのいでいます」——。
この記事は、そういう「異常なしと言われた、でもつらい頭痛」と付き合っている方のために書きました。先にお断りを。この記事は一般的な情報提供であり、診断や治療の指示ではありません。後述する「危険サイン」に当てはまる場合や、判断に迷う場合は、医療機関を受診してください。
頭痛は「国民病」——でも大半の人は病院に行かない
日本の疫学調査では、緊張型頭痛を持つ人は人口の約22%・およそ2,200万人、片頭痛は約8.4%・およそ840万人と推定されています。合わせると日本人の3〜4人に1人。頭痛は文字通りの国民病です。
それなのに、頭痛で医療機関にかかったことのある人は少数派です。「頭痛くらいで病院なんて」「どうせ異常なしと言われる」——そうして市販薬でしのぎ続けている方が大多数を占めます。
ここに2つの問題があります。1つ目は、ごくまれに「命に関わる頭痛」が混ざっていること。2つ目は、薬でしのぐという対処自体が、頭痛を悪化させる場合があることです(後で詳しくお話しします)。
まずは、ご自身の頭痛がどのタイプかを知るところから始めましょう。対処法はタイプによって全く違うからです。
あなたの頭痛はどの型?——3タイプの見分け方
慢性的な頭痛の大部分は、次の3タイプのどれか(または混合)です。まずは絵で当たりをつけてください。

タイプ①:緊張型頭痛——「締めつけられる」頭痛
- 頭の両側〜後頭部が、ヘルメットやハチマキで締めつけられるように痛む
- 痛みの強さは軽度〜中等度。「つらいけど、仕事はできてしまう」レベルが多い
- 体を動かしても悪化しない。むしろ動いたり入浴したりすると少し楽になる
- 吐き気はない(あっても軽い)
デスクワークの方に圧倒的に多いタイプです。首や肩まわりの筋肉の緊張、ストレス、同じ姿勢の持続が絡み合って起こります。
タイプ②:片頭痛——「ズキンズキンと脈打つ」頭痛
- 頭の片側(両側のこともあります)がズキンズキンと脈打つように痛む
- 中等度〜重度。動くと悪化するので、仕事や家事が手につかなくなる
- 吐き気を伴うことが多い。光や音がつらく、暗い静かな部屋にこもりたくなる
- 数時間〜3日ほど続く「発作」として起こり、発作が終わるとケロッとしている
「片頭痛」は俗称ではなく正式な病名です。脳の血管や神経の過敏性が関わる、緊張型とはメカニズムの違う頭痛です。ここを混同すると対処を間違えます。
タイプ③:首こり由来の頭痛(頸原性頭痛)——「首から来る」頭痛
- 首の付け根や後頭部から始まって、片側の側頭部や目の奥へ広がる
- 首を動かしたり、特定の姿勢を続けたりすると誘発される
- 痛む側がいつも同じ側であることが多い
- 首の付け根を押さえると「あ、そこそこ」という圧痛がある
医学的には「頸原性頭痛」と呼ばれます。首の上部の関節や筋肉のトラブルが、神経のつながりを介して頭の痛みとして感じられるものです。

「自分は2つ以上当てはまる気がする」という方も多いはずです。実際、緊張型と片頭痛を両方持っている方はたくさんいますし、首の状態が両方を悪化させていることもあります。厳密な診断は医師の仕事なので、ここでは「自分の頭痛の主成分はどれか」の見当をつけてもらえれば十分です。
なお、デスクワークで「後頭部から目の奥にかけて」の頭痛がある方は、あごの上がった姿勢が首の付け根を圧迫しているケースを別の記事で詳しく解説しています。あわせてどうぞ→マッサージしてもぶり返す肩こり・頭痛…原因は「目の使い方」と「あごの上がり」かも?
先に安全の話——すぐ病院に行くべき7つのサイン
対処法の前に、この章だけは必ず読んでください。頭痛の99%は命に関わりませんが、残り1%を見逃さないためのチェックリストです。国際的に使われている危険サインのリスト(SNNOOP10)から、特に重要なものを挙げます。
次のどれかに当てはまる頭痛は、施術でもセルフケアでもなく、医療機関(場合によっては救急)です。
- 突然の、経験したことのない激しい頭痛(数秒〜1分でピークに達する「雷が落ちたような」痛み)
- 発熱や首の硬直を伴う頭痛
- 手足のしびれ・脱力、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどを伴う頭痛
- 50歳を過ぎて初めて起こった頭痛
- いつもの頭痛とパターンが明らかに変わった、またはどんどん悪化していく頭痛
- 頭を打った後に出てきた頭痛
- がんの治療中・免疫が下がる病気がある・妊娠中に新しく出た頭痛

これらのサインの背後には、くも膜下出血(サイン1)、髄膜炎(サイン2)、脳梗塞・脳出血(サイン3)などの病気があります。
もうひとつ、知っておいてほしいのが椎骨動脈解離です。首の後ろを通って脳に血液を送る動脈の壁が裂ける病気で、「片側の首の後ろ〜後頭部の、急に始まる強い痛み」として現れます。働き盛りの比較的若い世代にも起こり、初期は「ひどい寝違え」や「首こりの頭痛」と区別がつきにくいのが怖いところです。「今までの首こりとは明らかに違う急な痛み」が出た時は、施術やマッサージではなく医療機関へ。首を揉んだり強くひねったりするのは、裂けた血管を悪化させるおそれがあり厳禁です。
逆に言うと、何年も同じパターンで繰り返していて、上のどれにも当てはまらない頭痛は、慌てる必要のないタイプである可能性が高い。安心して続きを読んでください。
鎮痛薬の飲みすぎが、頭痛を増やす
この記事で一番伝えたいことのひとつがこれです。
市販の鎮痛薬を月に10〜15日以上飲む生活を3ヶ月以上続けると、薬そのものが頭痛を慢性化させることがあります。「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」という正式な診断名がある、国際的に確立された病態です。
痛み止めが常に体内にある状態が続くと、脳の痛みセンサーの感度がじわじわ上がってしまい、「薬が切れると頭痛がする→また飲む→さらに感度が上がる」という悪循環に入ります。
目安として国際基準では、ロキソプロフェンやイブプロフェンなど(市販薬では「ロキソニン」「イブ」などの名前で売られています)の単一成分の鎮痛薬は月15日以上、複数成分の配合薬や片頭痛用のトリプタン製剤は月10日以上を、3ヶ月以上続けている場合が「使用過多」とされています。
ドキッとした方へ。責める話ではありません。つらいから飲む、それは当然のことです。ただ、「月に10日以上飲んでいる」に心当たりがあるなら、それはセルフケアの限界を超えているサインです。頭痛外来や脳神経内科で相談する価値が十分にあります。今は片頭痛の予防薬も進歩していて、「薬でしのぐ」から「発作自体を減らす」への切り替えが現実的な選択肢になっています。
手帳やスマホのカレンダーに「薬を飲んだ日」に印をつけるだけで、自分の現在地が見えます。今日からできる、コストゼロの第一歩です。
「ストレッチより筋トレ」という最新知見
「頭痛や肩こりにはストレッチ」。誰もがそう思っていますよね。私も長年、仕事でストレッチを指導してきました。
ところが2025年に発表された、複数の臨床試験をまとめた解析で意外な結果が出ました。緊張型頭痛に対して、首や肩の筋力トレーニングは頭痛の頻度を有意に減らした一方で、ストレッチ単独ではむしろ頻度が増える方向の結果だったのです。
正直に言うと、この結果はまだ「確定」ではありません。研究の質のばらつきもあり、今後変わる可能性もあります。ただ、「筋トレが効く」方向の証拠は以前から積み上がっており、臨床の実感とも一致します。首を支える筋肉が弱いと、頭(体重の約1割もある重り)を一日中支えるコストがすべて筋肉の「緊張」で支払われることになるからです。ストレッチで一時的に緩めても、支える力が変わらなければ翌日また同じことが起こります。
今日からできる首肩の筋トレ2つ
道具なし・1日5分でできるものを2つだけ紹介します。「たった2つ?」と思うかもしれませんが、続かないメニューに意味はないので、あえて絞ります。

①あご引きエクササイズ(首の深部の筋肉を鍛える)
- 椅子に座って背筋を伸ばし、正面を見る
- あごを水平に「スーッ」と後ろへ引く(二重あごを作るイメージ。上や下を向かない)
- 引き切ったところで5秒キープ、ゆっくり戻す
- 10回×2セット。デスクワークの合間に
②肩すくめエクササイズ(肩まわりの筋肉を鍛える)
- 立つか座るかして、腕は体の横に垂らす
- 両肩を耳に近づけるように「グッ」とすくめて3秒キープ
- ストンと脱力して下ろす
- 15回×2セット。慣れたら水を入れたペットボトルを両手に持って負荷アップ
ポイントは、痛みのない範囲で・週3日以上・最低6週間続けること。筋肉が変わるには時間がかかります。2週間で効果判定をしないでください。
片頭痛タイプの方は「有酸素運動」が主役
片頭痛には別のアプローチが必要です。発作中に筋トレをするのは逆効果ですし、片頭痛そのものを首肩の筋トレで抑える証拠はまだ弱いのが現状です。
代わりに証拠が積み上がっているのが有酸素運動です。2026年に発表された最新の解析では、早歩きやジョギングなどの有酸素運動の量が多い人ほど片頭痛の痛みが減る関係が示されました。まずは1回30分の早歩きを週3回あたりから。発作のない日に行うのが原則です。
あわせて、片頭痛は「引き金の管理」が効きます。寝不足と寝すぎ・空腹・脱水・強い光——自分の引き金をメモしておくと、発作の予測と回避がうまくなります。
手技によるケアは頭痛に効くのか——研究の正直な線引き
私は施術を仕事にしている側の人間ですが、だからこそ正直に書きます。研究の世界では、徒手療法(手技によるケア)の結果は頭痛のタイプによってはっきり差があります。
首こり由来の頭痛(頸原性頭痛):首の関節や筋肉が原因なので、そこへの徒手的なアプローチを検証した研究が最も多いタイプです。2024年の臨床試験では、運動療法に徒手療法を加えたグループは、運動だけのグループより頭痛の頻度・強さ・生活への支障が長期的に改善したと報告されています。
緊張型頭痛:短期的に痛みを和らげる報告は複数ありますが、施術単独の長期効果となると証拠は一貫していません。先ほどの筋トレとセットで初めて、変化が定着すると考えるのが現在の研究に沿った理解です。
片頭痛:片頭痛そのものを手技で抑えられるという質の高い証拠は、今のところありません。片頭痛の主戦場は、医師による診断と薬物療法+有酸素運動+引き金管理です(首こりが引き金のひとつになっている場合に、そこを整える意味はあります)。

どこかで施術を受けることを考えている方は、次の3つを目安にしてください。
- 最初に頭痛のタイプを見分けようとしてくれるか。 問診もそこそこに「とりあえず揉みましょう」は感心しません。危険サインの確認をしてくれるかどうかも大事な判断材料です
- セルフケア(運動)の指導があるか。 「施術+自分で動く」が現在の研究が支持する組み合わせです
- 期間を区切って効果を判定するか。 海外のガイドラインでは徒手療法や運動療法は「6週間で8〜10回程度」がひとつの目安とされています。それで変化ゼロなら、方針を変えるべきです。何ヶ月も同じことを漫然と続けるのは、お金と時間がもったいないです
まとめ:今日やることは2つだけ
長い記事をここまで読んでくださり、ありがとうございました。全部覚える必要はありません。今日やることは2つだけです。
- 危険サインのチェック(当てはまれば医療機関へ。当てはまらなければ安心材料に)
- カレンダーに「薬を飲んだ日」の記録を始める(月10日を超えていたら頭痛外来へ。超えていなければ、首肩の筋トレを今日から)
頭痛は「体質だから」「もう何年もこうだから」と諦めている方が一番多い症状です。でも、タイプを見分けて、合った対処を6週間続ければ、変えられる余地は思っているよりずっと大きいと感じています。この記事が、その最初の一歩になればうれしいです。
主な参考情報:日本頭痛学会「頭痛の診療ガイドライン2021」/国際頭痛分類第3版(ICHD-3)/緊張型頭痛への運動介入のネットワークメタ解析(2025年)/頸原性頭痛への徒手療法+運動療法のランダム化比較試験(2024年)/片頭痛と有酸素運動のメタ解析(2026年)/危険な頭痛のスクリーニング基準SNNOOP10(2019年)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療に代わるものではありません。効果の感じ方には個人差があります。症状が続く場合・強い場合は医療機関にご相談ください。