「股関節唇損傷」にストレッチは逆効果?揉むと悪化する3つの理由を理学療法士が解説
2026/1/16
この記事で分かること
- ✓股関節唇損傷でストレッチしても痛みが引かない場合の「関節の緩さ」という原因
- ✓無理にほぐすと防御反応が失われ悪化するリスク
- ✓「緩める」でなくインナーマッスルで「安定させる」改善の方向性

この記事でわかること
- 股関節唇損傷と診断され、ストレッチをしても痛みが引かない場合、関節の「不安定性(緩さ)」が原因である可能性があります。
- この場合、無理に筋肉をほぐすと、防御反応が働かなくなり痛みが悪化するリスクがあります。
- 必要なのは「緩めること」ではなく、インナーマッスルを使って「関節を安定させること」です。
- 理学療法士歴15年の院長が、実際の改善事例と失敗談を交えて解説します。
【実録】私が10年前に失敗した「ある女子高生」の事例

こんにちは。名古屋市守山区の「フィジオサロンキムラ」の木村です。
理学療法士として15年、多くの患者さんと向き合ってきました。
今日は、私がまだ駆け出しの頃に担当した、ある患者さんの話をさせてください。
もしあなたが「マッサージを受けてもすぐに痛みが戻る」「ストレッチをしているのに良くならない」と悩んでいるなら、この話はあなたの痛みを解決するヒントになるはずです。
階段を登るときの「股関節の痛み」

当時の患者様は、16歳の女性(吹奏楽部マーチング担当)でした。
病院での診断名は「股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)」。
階段を登ると、足の付け根(鼠径部)が「ズキッ」と痛み、「カクカク」と音が鳴るのが悩みでした。
教科書的な知識しかなかった10年前の私は、「痛い=筋肉が硬い」と思い込んでいました。
だから一生懸命、彼女の股関節をマッサージし、ストレッチで広げる治療をしていました。
しかし、彼女の反応は「うーん、さっきよりはマシかも?」という曖昧なものでした。劇的な改善は見られず、むしろ「カクカク感」は残ったままだったのです。
「硬い」のではなく「グラグラ」だった

今の私なら、当時の自分にこう叫びます。
「その股関節は硬いんじゃない!グラグラして不安定だから痛いんだ!緩めちゃダメだ!」
当時の指導官(熟練理学療法士)からの指摘と、最新の参考文献に基づくと、彼女の股関節は「硬い」のではなく「緩すぎてグラグラしていた(Microinstability)」のです。
関節がグラグラ動きすぎるせいで、骨と骨がぶつかって痛い。
それを防ぐために、周りの筋肉が「これ以上動かないで!」と必死に硬くなって守っていた(防御性収縮)のです。
それなのに、私はその「守ってくれている筋肉」をマッサージで緩めてしまっていた。これでは治るどころか、逆効果です。
なぜ「緩い」股関節が痛むのか?

仕組みは、順番に見るとシンプルです。
- 関節が緩い
- 動くたびに、骨が本来の範囲を超えて動きすぎる
- 骨と骨(太ももの骨と骨盤の受け皿)がぶつかり、間にある関節唇が擦れたり挟まれたりする
- 痛みが出る
つまり、痛みの引き金は「硬さ」ではなく「動きすぎ」。ここを取り違えると、対策がすべて逆になってしまいます。
揉むと悪化する「3つの理由」
理由1:その「硬さ」は、体を守る防御反応だから

グラグラの関節をこれ以上動かさないように、周りの筋肉が「壁」を作って必死に固定してくれています。これが防御性収縮です。あなたが感じている硬さは、痛みの原因ではなく、体を守った結果なのです。
理由2:ほぐすと「防御壁」が壊れ、グラグラが再開するから

マッサージでこの壁を緩めると、直後は軽く感じても、関節の「動きすぎ」が再開します。骨どうしの衝突が再び起こり、痛みがぶり返す・悪化するという流れです。「その場は良いのに翌日だるい・痛い」の正体はこれです。
理由3:無理なストレッチは、関節の「袋」まで伸ばしてしまうから
関節を包んでいる袋(関節包)は、緩い関節を支える最後の砦です。無理なストレッチはこの袋ごと伸ばしてしまい、緩さをさらに強めてしまいます。筋肉と違って、一度伸びた関節包は簡単には縮みません。だからこそ「伸ばす前に、タイプの見極め」が必要なのです。
股関節唇損傷で「やってはいけないこと」

「緩いタイプ」の股関節唇損傷で、特に避けてほしいのは次の4つです。
- お姉さん座り(横座り):関節包を片側だけ引き伸ばす座り方です
- 無理な開脚ストレッチ:気持ちよさより、袋を伸ばすデメリットが上回ります
- 足の付け根を強く揉んでもらうこと:防御壁を壊してしまいます
- 自分で股関節をポキポキ鳴らして「はめ直す」癖:緩さを助長します
いずれも「柔らかくすれば治るはず」という思い込みから来る行動です。緩いタイプの方には逆効果になりえます。
あなたはどっち?「硬いタイプ」と「緩いタイプ」で対策は正反対

| 硬いタイプ | 緩いタイプ | |
|---|---|---|
| 痛みの背景 | 関節や筋肉が硬くて動けない | 関節が緩くて動きすぎる |
| 合う対策 | ほぐす・ストレッチ | 安定させる・筋力強化 |
| ストレッチの反応 | 楽になり、効果が続く | 変わらない・翌日に悪化することも |
自分がどちらのタイプか分からないまま「とりあえずストレッチ」を続けるのが、一番の遠回りです。
「緩いタイプ」かも?セルフチェック

- 手首や親指が柔らかく、逆側に反ることができる(生まれつき関節が柔らかい体質)
- 股関節を動かすと「パキッ」「カクカク」と音が鳴る
- マッサージの翌日、だるさが出たり痛みが戻ったりする
当てはまる項目が多いなら、あなたの体に必要なのは「緩めること」ではなく、「正しく支える力をつけること(安定化)」かもしれません。
ストレッチの代わりに何をすればいい?

方向性は「インナーマッスルを働かせて、関節を安定させること」です。専門的にはMotor Control(正しい体の使い方の再学習)と呼ばれ、股関節の深層にある筋肉や体幹が、動くときに先回りして関節を支えられる状態を目指します。
ただし注意点があります。「筋トレすればいい」と自己流で腹筋運動やスクワットを頑張ると、フォームによってはかえって股関節に負担をかけることがあります。どの筋肉を・どの順番で・どの強さで働かせるかは、股関節の状態によって一人ひとり異なるためです。強い痛みや引っかかり感があるうちは自己判断で負荷をかけず、まず「硬いタイプか、緩いタイプか」の見極めから始めることをおすすめします。
よくある質問(Q&A)

Q1. 股関節唇損傷と言われましたが、手術せずに治りますか?
損傷した軟骨(唇)自体が自然に元通りにくっつくことは稀ですが、「痛みなく生活できる状態」にすることは十分可能です。痛みの原因の多くは「傷」そのものではなく、関節が不安定に動いて傷口を擦っている「動きのエラー」にあるからです。正しい筋肉の使い方(Motor Control)を覚えれば、手術を回避できるケースは多々あります。
Q2. 「不安定性」があるかどうか、自分でチェックできますか?
簡易的なチェック方法として、以下に当てはまる場合は不安定性のリスクがあります。
1. 手首や親指が柔らかく、逆に反ることができる(関節弛緩性)。
2. 股関節を動かすと「ポキポキ」「カクカク」と音が鳴る。
3. マッサージを受けた直後は楽だが、翌日だるくなったり痛みが戻ったりする。
Q3. ストレッチをしてはいけないのですか?
全てがダメではありませんが、「不安定性」があるタイプの方は過度なストレッチは禁物です。特に、お姉さん座りや、無理な開脚ストレッチは、関節を支えている袋(関節包)を伸ばしてしまい、症状を悪化させる最大の要因になります。
当院が選ばれる理由:「ほぐす」だけでは解決しない痛みを見抜く

多くの整体やマッサージ店では「痛い=筋肉が硬い=ほぐせば治る」と考えがちです。しかし、医学的なバックグラウンド(理学療法士としての経験)から見ると、それは危険な賭けであることも多いのです。
当院(フィジオサロンキムラ)では、以下のプロセスで「痛みの本当の原因」を分類します。
- Inputの問題: 関節や組織が本当に損傷しているのか?
- Processingの問題: 脳が痛みを過敏に感じ取っていないか?
- Outputの問題: 体の使い方が悪くて痛みを引き起こしていないか?(★ここが一番重要)
もしあなたが「どこに行ってもマッサージばかりで良くならない」と感じているなら、あなたに必要なのは「ほぐし」ではなく「安定させるトレーニング」かもしれません。
まずは一度ご相談ください

15年の経験と、失敗から学んだ確かな視点で、あなたの痛みの謎を解き明かします。
あなたの股関節が「硬いタイプ」か「緩いタイプ」か、まずはそこを確認することから始めましょう。
フィジオサロンキムラ
- 場所: 名古屋市守山区西川原町138