「分離症」と言われたスポーツ少年へ。コルセットを外した後、何もしないと再発します

分離症のコルセット除去後は「リハビリなし」での復帰は厳禁です

結論から申し上げます。腰椎分離症でコルセットが外れた直後は、最も再発リスクが高い時期です。長期間の固定により、腰を支える深層筋肉(インナーマッスル)が機能不全に陥り、体幹が不安定になっているからです。
痛みが消えて骨が癒合しても、「モーターコントロール(正しい体の使い方の再学習)」を行わずに復帰すれば、数ヶ月以内に同じ痛みに襲われる可能性が極めて高くなります。


こんにちは。名古屋市守山区の「フィジオサロンキムラ」院長の木村です。

部活に打ち込む学生にとって、「腰椎分離症(ようついぶんりしょう)」という診断は、目の前が真っ暗になるような宣告かもしれません。
「3ヶ月間の運動禁止」「硬性コルセットでの固定」。仲間が練習で汗を流す中、筋トレさえ許されず見学だけの日々は、精神的にも本当に辛いものです。

そして、ついに医師から「骨がくっついたから、コルセットを外していいよ」と告げられた時、多くの選手は「やっと動ける!」と喜び勇んでグラウンドへ戻っていきます。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。
私の臨床経験上、このタイミングで適切なリハビリを挟まずに復帰した選手の多くが、数ヶ月以内に痛みを再発、あるいは別の箇所を故障しています。

なぜ「骨は治ったのに、また痛くなるのか」。その理由と、親御さんに必ず知っておいていただきたい対策を解説します。

【実録】3ヶ月安静にしたのに、復帰初日に痛みがぶり返した中学生

以前、私が担当したある野球部の中学生(13歳・ピッチャー)の事例をご紹介します。
彼は腰の疲労骨折(分離症)と診断され、約3ヶ月間、投球を禁止されコルセット生活を送っていました。

医師から「今日から外してOK」の許可が出たその日に当院へ来院されましたが、彼の体には「3ヶ月の安静」による深刻な弊害が起きていました。

【彼に起きていた体の変化】

  • 運動不足とストレスによる過食で、体重が10kgも増加していた。
  • コルセットに頼りきりだったため、腹筋・背筋が驚くほど弱化していた。
  • 脳が痛みを記憶しており、「腰を反る動作」への恐怖心が染み付いていた。

彼は「もう治ったはず」と思っていましたが、実際に腰を少し反ってもらうと「ズキッとする」と顔をしかめました。
骨の癒合は確認されているのに、なぜ痛みが出るのでしょうか?

原因は「骨」ではなく「動きのエラー」

彼が分離症になった根本的な原因は、「股関節が硬すぎて、投球時に腰椎(腰の骨)だけで無理やり反っていたこと」でした。

3ヶ月休んで骨は修復されましたが、「股関節が硬いまま」「腰で投げる癖」といった根本原因は何も解決していません。
さらに、筋肉が落ちて体重が10kg増えた状態で、以前と同じ悪いフォームで投げればどうなるか。結果は火を見るよりも明らかです。

「休んでいる間」にサボり始める重要な筋肉の正体

なぜ、コルセットを外した直後の腰は危険なのでしょうか。
医学的な研究(Stabilization Exercise等の文献)において、腰痛を経験すると、背骨を直接支える深層の筋肉(多裂筋など)が、スイッチオフの状態(機能不全)になることが分かっています。

比較要素 アウターマッスル
(腹直筋など)
インナーマッスル
(多裂筋など)
役割 大きな力を出す 背骨を安定させる
安静時の変化 筋力が低下する 脳からの指令が届かなくなる
(スイッチOFF)
復帰後の反応 鍛えればすぐ戻る 意識的なリハビリをしない限り
戻らない

恐ろしいことに、この「腰を守る筋肉」のスイッチは、痛みが治まっても勝手には「オン」に戻りません。
コルセットを外した直後の腰は、いわば「支柱がグラグラのテント」のような状態です。この状態でダッシュやスイングを開始することは、再発への片道切符を渡すようなものなのです。

再発を防ぐ鍵は「モーターコントロール(運動制御)」

では、どうすればいいのでしょうか? 腹筋や背筋をガンガン鍛えればいいのでしょうか?
答えはNoです。

アウターマッスル(外側の筋肉)だけを固めても、繊細な背骨のコントロールはできません。
必要なのは、脳と神経に働きかけ、正しい動きを再学習させる「モーターコントロール(運動制御)」のアプローチです。

当院の復帰プログラム(一例)

  1. サボり筋の再起動(ドローイン等):
    呼吸やわずかな動きを使って、眠っているインナーマッスルだけにスイッチを入れる地味な練習を徹底します。
  2. 「腰を使わない」動きの習得(分離運動):
    腰椎(腰の骨)を安定させたまま、股関節と胸椎(胸の骨)だけを大きく動かす身体操作を覚えます。
  3. 競技動作への統合:
    実際にボールを投げる・走るといった動作の中で、無意識でも腰にストレスがかからないフォームを作り上げます。

親御さんへ:焦らず、まずは「体のチェック」を

お子さんが「早く練習に戻りたい!」「レギュラー争いに遅れたくない」と焦る気持ちは痛いほど分かります。
しかし、ここでの1ヶ月の過ごし方が、高校・大学と長くスポーツを続けられるか、それとも腰痛と一生付き合うことになるかの分かれ道です。

「コルセットが取れた日」は、ゴールのテープを切る日ではありません。
「正しい体を作るリハビリのスタートライン」に立った日です。

フィジオサロンキムラでは、分離症からの競技復帰を専門的な知識と経験でサポートします。
「病院のリハビリは終わってしまったけれど、本当に全力で動いていいか心配」という方は、ぜひ一度ご相談ください。


よくある質問(FAQ)

分離症の復帰に関して、患者様や親御さんからよくいただく質問をまとめました。

Q1. コルセットを外した翌日から走っても大丈夫ですか?

A. いきなりのランニングは推奨しません。
まずはウォーキングやジョギングから始め、痛みや違和感が出ないかを確認する必要があります。また、走る際の衝撃を吸収する「股関節の柔軟性」と「体幹の安定性」が戻っているかのチェックを受けることを強くお勧めします。

Q2. 腹筋運動をすれば再発を防げますか?

A. 一般的な上体起こし(シットアップ)は逆効果になることがあります。
体を丸める腹筋運動は、腰椎への負担が大きいため、分離症明けの時期には危険です。「プランク」のような姿勢を維持するトレーニングや、専門家の指導のもとで行う呼吸を用いたインナーマッスルトレーニングを行ってください。

Q3. 復帰後に腰に違和感があるのは普通ですか?

A. 多少の筋肉痛はあり得ますが、「ズキッとする痛み」は危険信号です。
筋肉が久々に動くことによる疲労感であれば問題ありませんが、骨折時と同じような鋭い痛みや、お尻・足へのしびれを感じた場合は、直ちに運動を中止し、専門家に相談してください。

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