「異常なし」と言われたその痛み。原因は「患部」ではなく「脳の誤作動」かもしれません

「異常なし」と言われた痛みの正体とは?

整形外科の検査で「異常なし」と診断されたにも関わらず続く痛みは、医学的に「中枢性感作(Central Sensitization)」と呼ばれる状態である可能性が高いです。
これは患部の組織損傷ではなく、脳や脊髄の神経システムが過敏になり、通常なら痛みを感じない刺激でも強い痛みとして誤認識してしまう「脳の誤作動」です。長引く慢性疼痛の多くに、このメカニズムが関与しています。


こんにちは。名古屋市守山区の「フィジオサロンキムラ」院長の木村です。

当院には、いくつもの整形外科や整体院を巡った末に、藁にもすがる思いで来院される方がいらっしゃいます。
その多くが、以下のような辛い経験をされています。

  • 「レントゲンもMRIも撮ったけど『異常なし』と言われた」
  • 「『ストレスですね』と心療内科を勧められた」
  • 「痛いと言っても信じてもらえず、気のせいだと言われている気がする」

まず、はっきりとお伝えします。
あなたの痛みは「気のせい」ではありません。現実に起きている痛みです。

ただ、痛みの震源地が「腰」や「膝」などの患部にあるのではなく、痛みを感じ取る「脳と神経(中枢)」に移ってしまっている可能性があります。

【実録】3年間苦しんだ腰痛が「脳へのアプローチ」で変化した事例

当院に来院されたAさん(50代女性)の事例をご紹介します。
彼女は3年間、原因不明の腰痛に悩み、常にコルセットを巻いて生活していました。「動くと痛い」という恐怖心から、日常生活の動作を極端に制限されていたのです。

しかし、検査をしても筋肉や関節に大きな問題はありませんでした。そこで私は患部のマッサージではなく、次のようなアプローチを行いました。

  • 「背骨は実はとても丈夫である」という正しい知識の共有
  • 痛みが出ない範囲での、ほんのわずかな「背骨を曲げる運動」の実践

結果、脳が「あれ?動いても痛くないぞ」と学習し直し、わずか1ヶ月後にはコルセットを外して散歩ができるまでになりました。
これは患部が治ったのではなく、脳の誤った警報システムが解除された好例です。

「火災報知器」が壊れて鳴り響いている状態

なぜ、傷がないのに痛いのでしょうか?
最新の疼痛科学(Pain Science)では、これを「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」という言葉で説明します。

痛みのセンサーを「火災報知器」に例えて比較してみましょう。

状態 火災報知器の反応(痛みの仕組み)
正常な状態 火事(怪我)が起きた時だけ、ジリリリ!と警報(痛み)が鳴ります。
火が消えれば音も止まります。
中枢性感作の状態 火事はもう鎮火している(傷は治っている)のに、警報装置自体が故障して、誤作動を起こし続けています。

痛みが長引くと、脳や脊髄の神経が過敏になり、そよ風が吹いたり、少し動いたりしただけでも「火事だ!(痛い!)」と大音量で警報を鳴らしてしまうのです。
これが、「異常なしと言われたのに痛い」の正体です。

「末梢派」と「中枢派」:治療のミスマッチ

理学療法の専門的な論文に『Are you Peripheralists? or Centralists?(あなたは末梢派?それとも中枢派?)』という議論があります。

あなたの痛みが治らない原因は、このアプローチの「ミスマッチ」にあるかもしれません。

タイプ Peripheralists(末梢派) Centralists(中枢派)
痛みの捉え方 原因は「患部(筋肉や関節)」にあると考える 原因は「脳・神経システム」にあると考える
主な治療法 マッサージ、電気治療、湿布、手術 認知行動療法、痛みの再教育、感覚再入力
適応する症状 急性の怪我、明らかな損傷がある場合 原因不明の痛み、長引く慢性痛

あなたの痛みがもし「脳の誤作動(中枢性)」によるものだとしたら、いくら「末梢派」の先生にマッサージや電気治療をしてもらっても、根本的な解決にはなりません。
故障しているのは現場(患部)ではなく、司令室(脳)だからです。

当院のアプローチ:「痛みの記憶」を書き換える

では、脳の誤作動をどうやって治すのでしょうか?
フィジオサロンキムラでは、患部をグイグイ揉むことよりも、以下のような科学的根拠に基づいたアプローチを重視します。

  1. 痛みの再教育(Pain Neuroscience Education)
    「動いても壊れない」「画像上の変形と痛みはイコールではない」という正しい知識を学び、脳の恐怖心を解きます。
  2. 感覚の再入力
    痛みを感じないような優しいタッチや、微細な運動を通じて、「ここは安全だ」という信号を脳に送り続けます。
  3. 段階的な露出(Graded Exposure)
    「痛そうで怖い動き」を分解し、絶対に痛くないレベルから少しずつリハビリし、脳の警報レベルを下げていきます。

よくある質問(FAQ)

当院に来院される、慢性的な痛みでお悩みの方からよくいただく質問をまとめました。

Q1. レントゲンで「異常なし」と言われましたが、本当に原因はあるのですか?

はい、あります。レントゲンやMRIは「骨や筋肉の形状」を写すもので、「痛みの信号」自体は写りません。「中枢性感作」のように、神経システムの過敏性が痛みの原因である場合、画像検査では異常が見つからないことが一般的です。

Q2. 「脳の誤作動」は精神的な問題ということですか?

いいえ、精神的な「気のせい」とは異なります。神経回路の電気信号が過剰に興奮している「生理学的な現象」です。リハビリテーションによって神経の興奮を鎮めることで、改善が期待できます。

Q3. どのくらいの期間で良くなりますか?

痛みを患っていた期間や、脳の過敏性の度合いにより個人差があります。1回の施術で変化を感じる方もいれば、脳の学習(書き換え)に数ヶ月を要する場合もあります。まずはカウンセリングで状態を確認させてください。

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