股関節の奥がズキズキする:変形性股関節症・股関節唇損傷の早期発見と対処

「股関節の奥がズキズキ痛む」「長時間座っていると鼠径部が痛い」「脚を内側に回すと痛みが出る」「スポーツ中に股関節がひっかかる感じがする」——こうした症状は股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)や変形性股関節症のサインかもしれません。
股関節の痛みは「腰痛」や「鼠径部痛」と混同されやすく、診断が遅れることがあります。また若年アスリートでは股関節唇損傷(ラブラム損傷)が見逃されることもあります。早期発見・早期介入によって多くのケースで手術を回避できます。
私は愛知県の理学療法士 木村晋一朗です。本記事では、股関節痛のメカニズムから理学療法士が行う評価・治療、そして日常生活でできる対処法まで、一次情報をもとに解説します。

- 股関節唇損傷と変形性股関節症の違いと共通点
- 股関節痛の「場所」から考える原因の鑑別
- 理学療法士による評価と治療アプローチ(一次情報:16歳女性症例)
- 大腿骨前方すべりとFAI(股関節インピンジメント)の関係
- スポーツ復帰のためのリハビリと日常生活での注意点
股関節の解剖と「なぜ痛みが起こるか」
股関節は骨盤の寛骨臼(かんこつきゅう)と大腿骨頭が深く噛み合った球関節で、体重を支えながら大きな動きを可能にする重要な関節です。寛骨臼の縁には股関節唇(ラブラム)という繊維軟骨のリングがあり、関節の安定性維持・関節液の分配・圧力分散に重要な役割を果たします。
股関節痛の主な原因
| 疾患・状態 | 典型的な痛みの場所 | 好発年齢・タイプ |
|---|---|---|
| 股関節唇損傷(ラブラム損傷) | 鼠径部〜股関節前面 | 若年〜中年スポーツ選手 |
| FAI(股関節インピンジメント) | 鼠径部・股関節前面 | 若年〜中年、スポーツ選手 |
| 変形性股関節症 | 鼠径部〜大腿前面・外側 | 中高年、女性に多い |
| 大転子疼痛症候群(腸脛靱帯・梨状筋) | 股関節外側(大転子部) | ランナー・中年女性 |
| 腸腰筋炎 | 鼠径部〜大腿前面 | ダンサー・マーチング選手 |
FAI(股関節インピンジメント)と股関節唇損傷の関係
FAI(Femoroacetabular Impingement:大腿寛骨臼インピンジメント)とは、股関節の形態異常により大腿骨頭と寛骨臼縁が繰り返し衝突(インピンジメント)し、関節唇や軟骨が損傷する状態です。
- Cam型:大腿骨頭頚部が楕円形(骨性突出)→屈曲・内旋時に寛骨臼縁に衝突
- Pincer型:寛骨臼が深すぎる(過被覆)→股関節縁が繰り返し挟まれる
- Mixed型:両者の合併
理学療法士による評価と治療(一次情報)
私が担当した症例(16歳女性・マーチング部、右鼠径部痛 NRS 3/10)では以下のアプローチを実施しました:
①疼痛部位と動作の評価
右鼠径部(股関節前面)に安静時NRS 3の疼痛。長時間の立位・行進動作・股関節屈曲動作で増悪。
②大腿骨前方すべりテスト(陽性)
本症例では大腿骨前方すべり(+)を確認。これは股関節屈曲時に大腿骨頭が前方へ過度にすべる動きで、関節唇前方部への繰り返しストレスを生じます。マーチング動作の高脚上げが反復されることで蓄積したと考えられました。
③インピンジメントテスト(FADIR test)
股関節を90°屈曲・内転・内旋させると鼠径部痛が再現(陽性)。Cam型またはMixed型FAIの関与が示唆されました。
④治療内容
- 股関節後方筋群(大殿筋・外旋筋)強化:大腿骨頭の前方すべりを抑制し、関節唇への圧迫を軽減
- Hip Hinge(ヒップヒンジ)動作トレーニング:股関節を後方に引きながら屈曲する動作を習得し、FAIポジション(屈曲+内旋)を回避
- 深層外旋筋(梨状筋・外閉鎖筋)ストレッチ:股関節内旋制限がある場合、インピンジメントを助長するため柔軟性を確保
- 体幹・骨盤安定化:骨盤の前傾が大きいと前方インピンジメントが増す。コアスタビリティ訓練で骨盤中間位を維持
- マーチング動作の修正:脚上げの高さ・内旋量を調整し、インピンジメントゾーンを回避した動作フォームに修正
変形性股関節症の理学療法
変形性股関節症(OA)は軟骨の摩耗・消失により股関節の変形が起こる疾患です。「手術しかない」と思われがちですが、早期〜中期であれば理学療法で痛みと機能を大幅に改善できます。
| 段階 | X線所見 | 理学療法の効果 |
|---|---|---|
| 初期 | 関節裂隙軽度狭小 | 高い(筋力強化・動作改善で症状コントロール可能) |
| 中期 | 関節裂隙中等度狭小、骨棘 | 中(痛みの管理・歩行機能改善・手術延期) |
| 末期 | 関節裂隙消失、骨変形 | 低(手術(THA)検討、術前・術後リハビリが重要) |
自宅でできるセルフケア
1. ヒップヒンジ練習
壁を背にして立ち、お尻を後ろの壁に向けて突き出しながら前傾する(膝はわずかに曲げ、背中はまっすぐ)。股関節の後方への動きを覚えることで日常動作でのインピンジメントを予防します。
2. クラムシェル(大殿筋・外旋筋強化)
横向きに寝て膝を90°曲げ、上の足を貝のように開く。10〜15回×3セット。大腿骨頭の前方すべりを防ぐ筋力をつけます。
3. 梨状筋ストレッチ
仰向けで片足を4の字に組み(ふくらはぎをもう一方の太ももに乗せる)、下の脚の太ももを両手で抱えて胸方向に引く。15〜30秒×3セット。深層外旋筋の柔軟性を確保します。
4. 腸腰筋ストレッチ(ランジポジション)
片膝立ちになり、後ろ足側の股関節前面を伸ばす。体幹は真っすぐに保ち、骨盤を前傾させない。15〜30秒×3セット。
よくある質問(Q&A)
Q1:MRIで関節唇損傷と言われましたが、手術が必要ですか?
A:関節唇損傷でも保存療法(理学療法)で多くの場合改善します。特に大腿骨前方すべりの修正・外旋筋強化・動作改善によって症状が軽減する例が多いです。手術(関節鏡視下修復術)は保存療法が3〜6ヶ月無効の場合や損傷が広範囲な場合に検討されます。
Q2:変形性股関節症でウォーキングは続けていいですか?
A:適度なウォーキングは軟骨への栄養供給・筋力維持に有益です。ただし「痛みが出るまで歩く」のは避けてください。目安は「歩行後2〜3時間で痛みが消える程度」。水中ウォーキングは関節への負荷が少なく特に有効です。
Q3:若い(10〜20代)のに股関節が痛いのはなぜですか?
A:若年の股関節痛はFAI(股関節インピンジメント)・股関節唇損傷・腸腰筋炎が多く見られます。特にダンス・マーチング・武道など股関節を繰り返し大きく動かすスポーツで起こりやすいです。「成長痛だから仕方ない」と放置せず、早めに評価を受けることが重要です。
まとめ
- 股関節痛は鼠径部痛が典型。唇損傷・FAI・変形性股関節症・腸腰筋炎を鑑別する
- 大腿骨前方すべり(+)は関節唇への繰り返しストレスの主因。外旋筋強化で修正する
- ヒップヒンジ習得でFAIポジション(屈曲+内旋)を日常動作から排除する
- 変形性股関節症も初期〜中期は理学療法で手術を延期・回避できるケースが多い
- 若年のスポーツ選手の鼠径部痛は「成長痛」と見過ごさず早期評価が重要
フィジオサロンキムラでは、股関節の精密な動作分析・大腿骨動態評価・インピンジメントテストを組み合わせた専門的な評価のもと、股関節痛の根本的な改善を目指した理学療法を提供しています。「股関節の奥が痛い」「手術以外の方法で治したい」という方はぜひご相談ください。
参考文献
- 木村晋一朗 臨床症例記録(股関節唇損傷・FAI)大学院実習記録, 2016-2017
- Griffin DR, et al. The Warwick Agreement on femoroacetabular impingement syndrome. Br J Sports Med. 2016
- Lewis CL, et al. Effect of Hip Angle on Anterior Hip Joint Force. J Biomech. 2010
- 変形性股関節症診療ガイドライン(日本整形外科学会)
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